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背骨は「縦のパーツ」ではなく「連動する一つの構造」
解剖学では、
頸椎・胸椎・腰椎と分けて学びます。
しかし臨床では、
背骨は一枚の「連続した波」です。
どこか一か所が止まれば、
必ず別の場所が動きすぎる。
つまり、
•頸椎の問題は、頸椎だけの問題ではない
•腰椎の問題も、腰椎だけでは終わらない
その中継点にあるのが、胸椎。
特に上部胸椎です。
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頸椎 × 上部胸椎:首は「T1〜T3の上に乗っている」
頸椎がつらい人ほど、T1〜T3は固い
首こり・ストレートネック・頸椎症。
こうした症状を持つ患者の多くは、
T1〜T3が“岩のように”動きません。
なぜか。
頸椎は本来、
胸椎の可動性を土台にして動く構造だからです。
土台が動かないと、
•頸椎は過剰に動く
•表層筋が緊張する
•深層筋が働かなくなる
結果として、
「首そのものを治療しても戻る」
という現象が起こります。
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頸椎治療が効かない本当の理由
頸椎をいくら緩めても、
アジャストしても、
すぐ戻るケース。
その多くは、
頸椎を“頸椎として”しか診ていない
という落とし穴にはまっています。
T1〜T3が固まったままだと、
•頸椎の下からの逃げ場がない
•回旋・側屈が上で代償される
•C5〜C7にストレスが集中する
つまり、
頸椎は被害者であることが多いのです。
上部胸椎が動き始めた瞬間、
頸椎治療の手応えがガラッと変わる。
これは多くの治療家が
「ある日突然わかる」臨床体験です。
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上部胸椎 × 腰椎:遠いようで、実は近い関係
一見、
T1〜T3と腰椎は遠い存在に思えます。
しかし、身体はこう考えています。
「上が動かないなら、下で帳尻を合わせよう」
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腰椎が頑張りすぎている人の共通点
慢性腰痛の患者を診ると、
•腰椎の可動性が高すぎる
•反りが強い
•安定性がない
というケースが非常に多い。
その背景にあるのが、
•胸椎が動かない
•胸郭が固い
•呼吸が浅い
という状態です。
特に上部胸椎が固いと、
•胸郭が持ち上がらない
•呼吸が腹部に落ちない
•腰椎が代わりに反る
結果、
腰椎が呼吸を代償する
という状態になります。
これはもう、
腰が壊れる準備が整っている状態です。
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胸椎が動くと、腰が「休める」
T1〜T3を含めた胸椎が動き始めると、
•吸気で胸郭が広がる
•呼気で自然に沈む
•腹圧が適切に使える
こうした流れが戻ります。
すると、
•腰椎の反りが自然に減る
•無意識の緊張が抜ける
•立位・歩行が安定する
腰を直接触らなくても、
腰が楽になる。
これは魔法ではなく、
連動が戻っただけです。
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頸椎・胸椎・腰椎を「別々に治療しない」
ここで重要な視点があります。
頸椎 → 胸椎 → 腰椎
どれか一つを主役にしない
という考え方です。
主役は常に、
「全体の流れ」。
ただし、
その流れを再起動させる
スイッチになりやすいのが、
上部胸椎なのです。
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臨床でのシンプルな判断基準
迷ったら、これを基準にしてください。
•頸椎がつらい → T1〜T3を必ず診る
•腰椎が不安定 → 胸椎の可動性を診る
•どこを触っても変わらない → 胸郭と呼吸を疑う
そして、
「いま一番、頑張らされている場所はどこか」
を考える。
そこは大抵、
本来の役割を押し付けられている場所です。
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上部胸椎は「連動の起点」
T1〜T3は、
•頸椎にとっては“土台”
•腰椎にとっては“免震装置”
•呼吸にとっては“起点”
という三つの顔を持っています。
ここが変わると、
•首が安心する
•腰がサボれる
•身体全体が軽くなる
治療が
「部分対応」から
「全体調整」へ変わる瞬間です。



