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「胸椎矯正4つのステップ」をベースに、胸椎は「ただ鳴らす場所」ではない
〜臨床の質を変える「胸椎矯正4つのステップ」〜
治療家として日々臨床に立っていると、
「胸椎が変わると、全身が変わる」
そんな感覚を持ったことがある方は多いのではないでしょうか。
呼吸が深くなる
首や肩の力が抜ける
腰の違和感まで軽くなる
胸椎はそれほどまでに全身へ影響を及ぼす部位です。しかし一方で、胸椎矯正に対してこんな声もよく耳にします。
•うまく矯正できない
•どこを狙っているのかわからない
•音は鳴るけど、変化が安定しない
それは決して技術センスの問題ではありません。
「流れ」と「準備」を飛ばしていることがほとんどなのです。
今回ご紹介する「胸椎矯正4つのステップ」は、日常臨床で90%以上の患者に使用されている、極めて再現性の高い胸椎アプローチの流れを言語化したものです 。
矯正は最後のワンシーン。
その前に、すでに勝負は決まっています。
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なぜ「4つのステップ」が必要なのか
多くの治療家は、矯正を「テクニック」として捉えがちです。
しかし実際の臨床では、矯正は単独では存在しません。
•どこに問題があるのか
•その椎骨はどう動きたがっているのか
•周囲の組織はどんな状態なのか
それらをすべて統合した結果として、矯正があります。
この4ステップは、
触る → 感じる → 緩める → 動かす
という、身体にとって自然な順序で構成されています。
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ステップ1:触診 〜情報はすでに手の中にある〜
触診は、すべての始まりです。
棘突起を両中指で丁寧に追う
三指(示指・中指・環指)で棘突起と横突起を同時に感じ取る
ここで大切なのは、「歪みを探す」よりも
左右差・質感・抵抗感の違いを感じることです。
歪みのある椎骨は、必ず周囲の椎骨との関係性に変化があります。
そのため、問題椎骨だけでなく、上下の椎骨を含めて細かく触診することが重要です 。
また、脊柱起立筋を含めた背部全体の筋バランスも同時に観察します。
•片側だけ硬い
•盛り上がりが強い
•押したときの反発が違う
これらはすべて、後のステップへの「ヒント」です。
触診とは、
手で診断し、頭で整理する作業
とも言えるでしょう。
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ステップ2:スプリングテスト 〜押さない、引く〜
次に行うのがスプリングテストです。
ここで最も重要なポイントは、
「押すテストではない」
という意識です。
手根部(カルケニアル)を接触部位とし、
皮膚のたるみをしっかり取り、
椎体の関節面方向を意識しながら、
一気に「引く」。
この一連の動作によって、
•椎骨の可動性
•抵抗の質
•他の椎骨との連動性
が明確になります 。
解剖学的には「胸椎は頭方へ動かない」と言われます。
しかし棘突起の角度、椎体の関節面の向きを立体的に捉えると、
「動かない」のではなく「動かし方が限定されている」
ことが理解できます。
ターグルスタンスを基本とし、
手で操作するのではなく、
自分の体重と重心移動を使う。
この感覚が身につくと、スプリングテスト自体が治療の一部になっていきます。
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ステップ3:筋膜・筋肉へのアプローチ 〜準備がすべてを決める〜
多くの矯正がうまくいかない原因。
それは、**「硬いまま動かそうとすること」**です。
このステップでは、
筋肉ではなく、まず筋膜にアプローチします。
筋膜リリースは、2〜3kg程度の軽い圧で十分です。
ここで狙うのは「緩める」ことではなく、
滑走性を取り戻すこと。
その後、脊柱起立筋や椎骨周辺筋に対して、
方向を変えながら筋肉へのアプローチを行います 。
横突起に軽くコンタクトし、
トルク(捻り)を加えながら、
•筋膜
•筋肉
•椎骨
を同時に感じ取る。
この段階で、
「もう動きたがっているな」
という感覚が手に返ってくるはずです。
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ステップ4:Adjustment 〜矯正は呼吸とともに〜
すべての準備が整ったあと、ようやく矯正です。
患者さんの呼吸に合わせ、
息を吐ききった瞬間にスラストを行います。
ここで重要なのは、
•棘突起の向き
•椎体の関節面の向き
が一致しないことを、常に意識することです 。
スラストの方向は、
「鳴らしたい方向」ではなく、
椎体が最も自然に動ける方向。
スプリングテストでは「引くだけ」だった動きが、
ここでは肘を伸ばしきり、一気に引く動作へと変わります。
音は結果であって、目的ではありません。
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胸椎矯正が変わると、臨床が変わる
この4つのステップを丁寧に積み重ねることで、
胸椎矯正は「怖いもの」でも「難しいもの」でもなくなります。
•再現性が高まる
•患者の反応が安定する
•自分の体も疲れにくくなる
そして何より、
治療の流れが美しくなる。
胸椎矯正は、単なるテクニックではありません。
それは、身体との対話の集大成です。
ぜひこの4つのステップを、
日々の臨床の「流れ」の中で使ってみてください。
きっと、
手の中の情報量が、
今までとはまったく違って感じられるはずです。



